地下水の動きから見えてくる自然と科学のつながり

連続講座「広域的地下水調査の重要性とその科学的意義」開催報告(2025年11月11日)

11月11日(火)、2025年度の新渡戸遠友連続講座を開催しました。今回の講師は、
池田光良氏(博士(工学)、技術士(応用理学)、APECエンジニア(Civil)、地下水技術者、自然環境復元協会北海道支部委員)。

演題は
「広域的地下水調査の重要性とその科学的意義」〜地下水流動のメカニズムとゲーテ的科学の類似性を考える〜
当日は**16名(一般15名・道民カレッジ生1名)**の方にご参加いただきました。


地下水流動の科学と防災・環境保全への貢献

池田氏は、地下水の動きを理解するには広域的な視点が必要であり、同位体水文学やシミュレーション技術の活用により、十勝平野や支笏湖〜美々川間などの地下水流動機構が初めて明らかになったと説明されました。こうした知見は、地下水資源の管理や汚染防止に役立てられているそうです。

また、地下水の正の働きとして、温泉や酒・清涼飲料水の原料となる良質な水の提供など、人間に恩恵をもたらしている点を紹介されました。一方で、負の側面としては、地下水が火山灰層に一時的に滞留して宙水を生じさせ、2018年の北海道胆振東部地震の斜面崩壊の一因となったことなどが挙げられました。これらを通じて、防災の観点からも地下水流動メカニズムの理解が不可欠であると強調されました。


科学と哲学が交差する視点

さらに池田氏は、湿原開発において地下水流動を無視すると植物や動物に深刻な影響を与えることに言及。これは自然を単に資源として扱う近代科学への警鐘でもあり、「自然と人間の調和」を説いたゲーテやレイチェル・カーソンの思想を引きながら、広域的・長期的視点の必要性を語られました。

講演を聞いた参加者の多くが、私たちの足元にある地下水という目に見えない自然のはたらきに、新たな驚きと理解を得た時間となりました。


講演資料のご案内

講師作成の**カラー資料(全18頁)**をご希望の方には、1部50円でお分けしております
ご希望の方は、三上までお問い合わせください。


次回講座のご案内

日時:2025年12月9日(火)13時開場、13時30分開演
講師:村口康博氏(北海学園大学豊平会常任幹事・本会活動委員)
演題:『新渡戸稲造の愛誦した古歌を味わう その2』
〜『世渡りの道』に引用された有名な古歌を、出典を明らかにしながら味わいます〜

本講座は「さっぽろ10区」にも掲載予定です。
ご友人をお誘い合わせのうえ、ぜひご参加ください。